
ITパスポートは転職に役立つ?取得のメリット・デメリットと資格の活用法
ITパスポートは転職市場で一定の評価を得られる国家資格です。しかし「本当に転職に役立つのか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
近年のDX推進により、IT知識を持つ人材への需要が高まっており、ITパスポートは基礎的なIT知識を証明する入門資格として注目されています。特に異業種からIT業界への転職や、非IT職種でもデジタルスキルが求められる現代において、その価値は高まっています。
本記事では、ITパスポートが転職に与える実際の影響や活かせる職種、取得のメリット・デメリットを詳しく解説します。この記事を読むことで、ITパスポートを転職に効果的に活用する方法が明確になり、あなたのキャリアアップにつながる具体的な戦略を立てられるようになります。
ITパスポート資格の概要
ITパスポートは正式名称を「Information Technology パスポート試験」といい、2009年に創設された情報処理技術者試験のエントリー区分です。試験はCBT方式で年間を通じて随時実施され、100問で120分の四肢択一式で実施されます。受験料7,500円で、学歴・職歴不問でだれでも受講できます。
出題範囲については以下のとおりです。
問題数 | 主な出題範囲 | |
ストラテジ系 | 35問 | 企業と法務、経営戦略、システム戦略 |
マネジメント系 | 20問 | 開発技術、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント |
テクノロジ系 | 45問 | 基礎理論、コンピュータシステム、技術要素 |
合格基準は、総合評価点600点以上とそれぞれの分野別評価点で300点以上とることです。
最新版の統計によると、2025年度上期(令和6年4〜5月)の合格率は51.9%、社会人のみで見ると54.5%でした。合格率50%超ということから、適切に学習すれば十分合格できるチャレンジしやすい試験といえます。
出典元:ITパスポート試験|試験結果
https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/openinfo/pdf/statistics/202505_ip_shikenkekka.pdf(2025年6月)
ITパスポートは転職に有利?その理由を解説
ITパスポートの出題範囲は、IT技術と経営知識の両輪で構成されています。そのため、IT業界未経験者でも幅広いビジネスシーンで応用できる知識の学習が可能です。
実際に、求人ボックスで「ITパスポート 未経験OK」で検索すると13,000件以上の求人がヒットし、エンジニア見習いから事務職、営業職まで歓迎しています。
転職エージェントの募集要項の多くは「基礎ITスキルを証明する資格」としてITパスポートを挙げており、履歴書に書ける客観的エビデンスとして活用されています。
求人票では「ITパスポート歓迎」「資格取得支援あり」といった表記が散見されます。
企業側が資格保有者を明示的に評価する背景には、ビジネス職種でも情報セキュリティやネットワークの基礎知識が必須となった現状があります。DX推進を掲げる企業ほど資格保持者を優遇し、入社後のIT教育コストを抑えようとする傾向が読み取れます。
出典元:求人ボックス「ITパスポート 未経験OK」の検索結果
ITパスポートを活かせる職種・業種
事務系総合職やITサポート、ヘルプデスクではトラブルシューティングの土台としてネットワークやPCアーキテクチャの理解が求められます。
営業や販売職であっても、クラウドサービスやソフトウェアの仕組みを説明できるスキルは商談成立率に直結します。
さらに、公務員やメーカーの総合職では、情報セキュリティポリシー策定やDX施策の立案にiパスで学ぶ管理系知識が不可欠です。こうした職種に応募する際、「資格+自己学習の成果物」を組み合わせると説得力が飛躍的に向上します。
ITパスポート取得のメリットとデメリット
ITパスポートを取得したときのメリットとデメリットを紹介します。
メリット
ITパスポート取得のメリットは、以下の3つです。
・初学者でも取り組みやすい
・転職活動の自己PRに使える
・社内でのスキルアップや昇進に有利
ITパスポートの合格率は50%超という適度な難易度のため、初学者でも取り組みやすい資格です。
また、転職活動で自己PRにも活用できます。たとえば、営業職であればITパスポートの学習を通じてIT分野の基礎知識を身につけることで、IT関連の商材を扱う際に専門的な用語や仕組みを理解してお客様に説明でき、信頼性の高い営業力をアピールできるでしょう。
ほかにも、資格手当や昇進要件として評価する企業が増えています。たとえば株式会社NTTドコモでは、合格者に一時金が支給され、住友電工情報システム株式会社では受験が義務付けられています。
さらに、社内プロジェクトでIT部門のメンバーと同じ土俵での議論が可能です。業務効率とコミュニケーションの質が向上し、キャリアの選択肢が広がります。
出典元:ITパスポート試験|企業における活用事例企業における活用事例https://www3.jitec.ipa.go.jp/JitesCbt/html/about/example.html#kigyou(2025年6月)
デメリット
ITパスポート取得のデメリットは、以下の2つです。
・実務経験がないと即戦力としては評価されにくい
・資格だけでは高度な職種には応募しにくい
実務経験の裏付けがなければ即戦力と評価されにくいのが現実です。
開発職や上位エンジニア職では、ITパスポートだけでは応募条件を満たせず、基本情報技術者試験や専門資格が求められます。
IT業界では技術の変化が激しく、資格取得後も継続的な学習とスキルアップが不可欠となります。そのため、ITパスポートを取得したからといって安心せず、実務経験を積みながら上位資格の取得を目指すことが重要です。
資格取得後の転職活動で意識すべきポイント
ITパスポートを取得したら転職活動では、以下の3つを意識しましょう。
・志望動機や自己PRで知識の活用例を示す
・ポートフォリオやIT学習の継続をアピールする
・求人情報でITパスポートを歓迎する企業を探す
ITパスポートを取得したら、まず志望動機や自己PRで「知識をどう活かすか」を語ることが重要です。
たとえば、学習過程で作成したネットワーク図やExcelマクロをポートフォリオにまとめ、面接で活用シーンを提示しましょう。次に、求人検索で「ITパスポート歓迎」「未経験OK」と書かれたポジションを積極的に探し、資格手当や社内研修の充実度を比較検討します。
最後に、資格に甘んじずPythonのオンライン講座やセキュリティ研修を継続することで、学習意欲とスキル向上の姿勢を示しましょう。
ITパスポート以外に取得を検討すべき資格
ITパスポート以外におすすめの資格は、以下の3つです。
・基本情報技術者試験
・MOS(Microsoft Office Specialist)
・ビジネスキャリア検定
基本情報技術者試験は、ITパスポートの上位資格としてシステムエンジニアやプログラマーを目指す方に最適で、技術職への転職で大きなアドバンテージとなります。
MOS(Microsoft Office Specialist)は、Excel、Word、PowerPointなどの実務スキルを証明でき、事務職や営業職への転職でITパスポートと相性抜群です。
ビジネスキャリア検定は、人事・経理・営業など特定業務の専門知識を証明し、IT化が進む各業界で即戦力としてアピールできます。
これらの資格をITパスポートと組み合わせることで、転職市場での差別化を図り、より幅広い職種にチャレンジできるようになります。
目指す職種に応じて戦略的に資格を選択することで、将来の選択肢の幅を広げられるでしょう。
まとめ
ITパスポートは、デジタル社会を生き抜くための基礎ITリテラシーを国が認定する資格です。転職市場では「未経験OK」「ITパスポート歓迎」といった求人が存在し、取得するだけで書類選考通過率を底上げできる可能性があります。
ただし、実務経験や追加スキルの裏付けがあってこそ資格は真価を発揮します。資格取得をゴールではなくスタート地点と捉え、学びを止めずにスキルを磨き続けることが、キャリアアップにつながります。
ITパスポートの取得は、未経験でもIT業界を目指す第一歩として有効です。
担当コンサルタント:南雲 亮

2008年株式会社リクルートキャリア(現リクルート)に入社。
キャリアアドバイザー、マーケティング企画・DX推進マネジャー、HR領域のSaaS新規事業開発・サービス企画部長を歴任。
2021年にsincereedを創業。