
中途採用でSIerに転職!転職するのは難しい?転職難易度は?
「SIer(システムインテグレーター)に転職したいけど、自分のスキルで通用するのか不安」「未経験からでも挑戦できるのか知りたい」──そんな思いを抱える方は少なくありません。
ITエンジニアとしてのキャリアを考えるうえで、SIerは今もなお多くの案件と雇用機会を提供している業界です。一方で、プロジェクトの大規模化や顧客との折衝、技術トレンドの変化に対応する力が求められ、誰でも簡単に転職できるわけではありません。
本記事では、SIerへの転職の難易度をはじめ、求められるスキルや年収水準、未経験者が突破するためのコツ、さらにはおすすめ企業の特徴までを網羅的に解説します。
「SIerってそもそもどんな仕事?」「経験を活かして年収を上げたい」「キャリアアップの選択肢として有望なのか」などの疑問に応える内容となっているので、転職活動の第一歩としてぜひご活用ください。
SIerとは?業界の基本知識を整理しよう
SIerの定義(システムインテグレーター)
SIer(エスアイヤー)とは、「System Integrator(システムインテグレーター)」の略称で、企業や自治体などのクライアントに対して、ITシステムの設計・構築・運用までを一括して提供する企業を指します。ハードウェアやソフトウェアなどの個別技術を組み合わせ、クライアントの業務課題を解決するシステム全体を統合的に提供するのが主な役割です。
業界では、元請けとしてプロジェクト全体を取りまとめる「一次請け」の大手SIerから、特定工程や特定業界に強みを持つ「中堅・特化型SIer」まで、さまざまなプレイヤーが存在しています。
▼日本のSIer 例
大手SIer
(一次請け・元請け中心) |
NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、TIS、SCSK、伊藤忠テクノソリューションズ、大塚商会 |
中堅・独立系SIer
(準一次〜二次請け) |
オージス総研、Sky株式会社、システナ、富士ソフト、インフォコム、NSD、ニッセイ情報テクノロジー、旭情報サービス(AIS)、電通国際情報サービス(ISID) |
特化型・ニッチ系SIer
(専門領域に特化) |
BIPROGY(日本ユニシス)、JSOL、HENNGE、ソフトバンク・テクノロジー、セゾン情報システムズ、NRIセキュアテクノロジーズ、クレスコ |
参照:Sky株式会社 情報サイト:https://www.skygroup.jp/media/article/4079/?utm_source=chatgpt.com(2025年6月)
業務内容(案件例、顧客との関係性)
SIerの業務は、以下のように多岐にわたります。
- 要件定義・基本設計:クライアントの業務課題やニーズをヒアリングし、ITシステムの仕様を固めるフェーズ。
- 詳細設計・開発:設計に基づいたシステムのプログラミング、構築。
- テスト・導入支援:構築したシステムが想定通りに動作するか検証し、クライアント環境に導入。
- 運用・保守:導入後の障害対応、機能追加などの継続的サポート。
プロジェクトは数ヶ月〜数年規模で行われ、ユーザー企業との長期的な関係構築が求められます。そのため、技術力と同時に、業務理解力やコミュニケーション力も重要視される業界です。
SIer業界の現状(2025年時点での動向)
2025年現在、SIer業界は次のような動向が見られます。
・DX案件の増加
経済産業省のレポート(DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて)でも指摘されている通り、多くの企業が老朽化した基幹システムの刷新や、業務の自動化・可視化を進めています。
・クラウド対応・セキュリティ需要の拡大
AWSやAzureなどのクラウド導入支援、ゼロトラスト型(すべてのアクセスを信用せず、常に検証する」という考え方に基づいたセキュリティモデル)のセキュリティ設計など、専門性の高い案件が増えています。
・人材不足の深刻化
ITエンジニアの需給ギャップは依然大きく、経験者・未経験者を問わず、学ぶ意欲と基礎力があれば採用チャンスはあります。
SIer業界は依然として日本のIT投資の中核を担う業種であり、キャリアパスの選択肢も多い分野です。とはいえ、プロジェクトの規模や働き方には企業ごとの差も大きいため、次章以降で「転職難易度」や「求められるスキル」などを詳しく解説していきます。
参照:経済産業省 DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて:
参照:経済産業省 サイバーセキュリティ産業振興戦略:
https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250305001/20250305001-2.pdf?utm_source=chatgpt.com(2025年6月)
SIer転職の難易度は?【経験者・未経験者で比較】
SIerへの転職を検討する際、多くの人が気になるのが「転職の難易度」です。ここでは経験者と未経験者に分けて、それぞれの難易度や転職成功のポイントを解説します。
経験者の転職難易度と特徴
IT業界やSIerでの実務経験がある方は、比較的転職しやすい状況にあります。特に2025年時点では、以下のような背景から即戦力の採用ニーズが非常に高まっているためです。
・大手企業のDX案件増加による体制強化
・クラウドやセキュリティ分野での専門人材の不足
・上流工程(要件定義・顧客折衝)を担える人材のニーズ増加
評価されるスキル・経験例
・要件定義、基本設計、プロジェクトマネジメント経験
・開発系エンジニアであれば、プログラミングスキル+フレームワーク理解
・AWSやAzureなどのクラウド経験
・顧客との折衝・調整力
企業側は「歓迎する経験」として、SIerプロジェクトでのチームリーダー経験や業務知識のある業界特化型(金融・製造など)エンジニアなどを明記していることが多く、スキルとドメイン知識の両立がカギとなります。
参照:NTTデータ 求人一覧:https://nttdata-career.jposting.net/joblist/(2025年6月)
参照:富士通 求人一覧:https://fujitsu-career.my.salesforce-sites.com/?_gl=1*1ftnlg6*_ga*ODcyNjg5MDc3LjE3NTA1NTI3OTc.*_ga_W09CTHGL3V*czE3NTA1NTI3OTckbzEkZzEkdDE3NTA1NTI4MDMkajU0JGwwJGgw(2025年6月)
未経験からの転職は可能か?
一方で、未経験からのSIer転職は難易度が高い傾向にあります。SIerでは、仕様書通りに開発するだけでなく、顧客の業務理解やチーム間の調整力も求められるため、即戦力が期待されやすい職種だからです。
未経験転職が難しい理由
・顧客対応・要件定義など『上流工程』が多いため
SIerの多くはクライアント企業から業務システムの開発や保守を受託しています。要件定義・設計・進捗管理など、『上流工程』が占める割合が大きいため、下記のような即戦力スキルが必要になります。
・顧客との折衝・調整力
・業務知識(会計、製造、流通など)
・スケジュール・予算管理経験
・チームマネジメントスキル
特に大手SIerでは大企業や官公庁からの案件が多く、大規模案件の上流工程に携わる機会が多くなります。これらはOJTだけでは短期間で習得が難しいため、過去に同様のプロジェクト経験がある人材が強く求められます。
・顧客先常駐やチームでの即応が求められる
多くのSIerでは、プロジェクトごとに顧客先に常駐したり、社外メンバーと協働することが日常です。そうした現場では次のような対応力が求められます。
・場に応じたビジネスマナーや会話スキル
・トラブル発生時の切り分け・報告・連携
・仕様変更や設計変更への柔軟対応
こうしたスキルは実務経験を通じて身につくものが多いため、経験者が重宝されます。
しかし、完全に不可能ではありません。以下のような突破口や未経験OKの企業特徴を押さえれば、チャンスは十分あります。
未経験OKの企業に見られる傾向
・自社内開発比率が高く、研修制度が整っている中堅SIer
・「ポテンシャル採用」「文系出身者歓迎」と記載がある求人
・SES(準委任型)スタートで育成前提の配属パターン
対策ポイント
・JavaやSQL、ネットワーク基礎などは独学で習得しておく。成果物まで作れていると◎。
・可能であれば基本情報技術者試験などの資格取得をしておく。
・職務経歴書で「なぜSIerを目指すのか」「業務理解のための努力」などを明確に伝える
SIer転職に求められるスキルと知識
SIerへの転職では、エンジニアとしての技術力だけでなく、顧客との折衝や業務理解力など、総合的なスキルセットが求められます。ここでは、主に中途採用で重視される3つのスキル領域を解説します。
技術スキル(Tech Skill)
技術スキルは、職種や配属ポジションによって異なりますが、以下のようなスキルがSIerで特に評価されます。
言語 | Java、C#、Python、SQL、JavaScriptなど |
インフラ・クラウド | AWS、Azure、GCP、Linuxサーバー、ネットワーク設計 |
開発工程 | 要件定義、基本設計、詳細設計、テスト、リリース管理 |
フレームワーク | Spring、.NET、React、Vue.jsなど(企業による) |
プロジェクト管理 | PMBOK、WBS、アジャイル(Scrum)など |
クラウド導入支援やアジャイル開発の経験がある場合、DX・内製化ニーズの高まりに合致するスキルとして重宝されます。
ヒューマンスキル(人間関係スキル)
SIerの仕事はチーム開発・顧客対応が中心のため、人と連携する力が非常に重要です。以下のようなスキルが評価されます。
・コミュニケーション能力:顧客・上司・チームとの意思疎通
・提案力・プレゼン力:技術的な選定理由や業務改善案の説明
・リーダーシップ・調整力:開発メンバーや協力会社との連携
・課題発見・解決能力:プロジェクト中のリスク対処や仕様変更対応
・特に上流工程(要件定義・設計など)を担う職種では、技術以上にヒューマンスキルが問われることもあります。
業務理解力・業界知識
SIerのクライアントは、金融、製造、流通、官公庁、医療など多岐にわたるため、各業界ごとの業務知識があると強い武器になります。
例えば、
・金融業界向けSIer:勘定系・リスク管理・マイナンバー関連
・製造業界向けSIer:生産管理、在庫管理、IoT連携
・公共向けSIer:マイナポータル、基幹業務支援(税・福祉)
また、業務フロー(例:受発注処理、決済処理)の理解力も重要で、「技術」と「業務」の橋渡し役ができる人材は重宝されます。
参照:NTTデータ 求人一覧:https://nttdata-career.jposting.net/joblist/(2025年6月)
参照:富士通 求人一覧:https://fujitsu-career.my.salesforce-sites.com/?_gl=1*1ftnlg6*_ga*ODcyNjg5MDc3LjE3NTA1NTI3OTc.*_ga_W09CTHGL3V*czE3NTA1NTI3OTckbzEkZzEkdDE3NTA1NTI4MDMkajU0JGwwJGgw(2025年6月)
SIer転職で期待できる年収・給与水準
SIerへの転職を検討する際、気になるのが年収や報酬水準です。ここでは、経験や企業規模別に見た年収相場、近年の傾向、年収を上げるためのポイントを解説します。
▼経験別の年収相場(目安)
未経験・第二新卒 | 400万円前後 |
実務経験3〜5年 | 450万〜600万円程度 |
上流工程・リーダークラス | 600万〜750万円程度 |
PM/コンサル相当クラス | 750万〜1000万円以上 |
※上記はあくまで一般的な目安です。地域や職種、企業によって変動があります。
▼企業規模別の年収傾向
大手SIer | 基本給・賞与が高水準、福利厚生も充実 | 600万〜1000万円前後 |
中堅・独立系 | 実力評価型やプロジェクト手当型が多い | 400万〜800万円前後 |
特化・ニッチ型 | 高スキル領域で年収幅広、個人差大きい | 500万〜1000万円前後 |
参照:NTTデータ 求人一覧:https://nttdata-career.jposting.net/joblist/(2025年6月)
参照:富士通 求人一覧:https://fujitsu-career.my.salesforce-sites.com/?_gl=1*1ftnlg6*_ga*ODcyNjg5MDc3LjE3NTA1NTI3OTc.*_ga_W09CTHGL3V*czE3NTA1NTI3OTckbzEkZzEkdDE3NTA1NTI4MDMkajU0JGwwJGgw(2025年6月)
参照:システナ 求人一覧:https://hrmos.co/pages/systena/jobs(2025年6月)
参照:BIPROGY 求人一覧:https://hrmos.co/pages/biprogy/jobs?category=1943616269890748416,1993942947585077248(2025年6月)
年収を上げるためのポイント
- 上流工程の経験を積む
要件定義・設計・顧客折衝などを担えると評価が高まります。 - 資格取得で専門性を証明する
AWS認定、PMP、応用情報などはアピール材料になります。 - クラウド・セキュリティ・AI領域に対応できるスキルを磨く
年収レンジが1段階高くなる可能性があります。 - 大手へのキャリアアップを狙う
中堅→大手への転職は、年収とポジションの両方を引き上げるチャンスです。
転職成功のためのポイントと準備
SIerへの転職を成功させるには、事前の準備が何より重要です。ただの「スキルマッチング」ではなく、応募先に応じた戦略的な自己PRや、職務経歴の見せ方が合否を大きく左右します。ここでは、転職活動の基本的な流れと、成功に近づくための具体的な対策を解説します。
▼転職活動の流れと準備すべきこと
情報収集 | 応募企業のSIerとしての特徴、案件分野、働き方を把握 |
自己分析 | 「これまで何をやってきたか」「どんな貢献ができるか」を言語化 |
応募書類作成 | 職務経歴書・履歴書に沿ってスキル・実績を整理 |
エージェント活用 | IT業界に強い転職エージェントで非公開求人や推薦を受ける |
面接対策 | 企業ごとに想定問答を整理し、経験をもとに具体的に答えられるよう準備 |
▼面接でよく聞かれる質問とその意図
質問例 | 面接官の意図 |
「どんなプロジェクトを経験しましたか?」 | スキルの深さと関与度、担当フェーズを確認 |
「困難だった経験とその対処は?」 | 問題解決能力やチームとの関わり方を見ている |
「なぜ当社を選んだのですか?」 | 業界理解と志望動機の一貫性を確認 |
「転職理由は?」 | キャリアの一貫性やネガティブ要因を確認 |
※実績を「数字+動き+結果」で語るのがポイントです(例:「売上20%向上につながる在庫管理システムの刷新を担当」など)。
まとめ|SIerへの転職は準備がすべて
SIer業界への転職は、経験やスキルの有無によって難易度が大きく変わる分野です。特に中途採用では即戦力を求められることが多いため、スキルや実績の棚卸し、応募書類の精度、業界理解が成功の鍵となります。
一方で、未経験者にもチャンスがまったくないわけではありません。育成意欲のある企業を選び、基礎スキルや学習姿勢をアピールすることで道は開けます。
この記事で押さえておきたいポイント
・SIerとは何かを正しく理解することが転職活動の出発点
・経験者は上流工程やクラウド・PM経験などが高評価
・未経験者はIT基礎・業界研究・明確な志望動機が重要
・年収はスキル・企業規模によって大きく変動するが、上昇余地あり
・成功のカギは自己分析と事前準備。転職エージェントの活用も有効
情報収集だけで終わらず、まずは自己分析やスキルの棚卸しから始めましょう。
「自分はどの工程に関われるのか」「どの業界知識が活かせるか」を明確にすれば、自分に合ったSIer企業が見えてくるはずです。
担当コンサルタント:南雲 亮

2008年株式会社リクルートキャリア(現リクルート)に入社。
キャリアアドバイザー、マーケティング企画・DX推進マネジャー、HR領域のSaaS新規事業開発・サービス企画部長を歴任。
2021年にsincereedを創業。