『開拓者精神』で見つけ出す変革の種──味の素社のAIコンサルタントが目指す食の未来
2025/09/18

『開拓者精神』で見つけ出す変革の種──味の素社のAIコンサルタントが目指す食の未来

味の素社が全社を挙げて推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)。その中核を担うDX推進部では、AIなどの先進技術を活用し、既存事業の変革から新規事業の創出まで、多岐にわたる挑戦をしています。

 

今回は、その最前線で活躍する先進ITグループの高木様と、グローバルITサービスグループの髙瀬様にお話を伺いました。

 

高木 亮輔様

DX推進部 先進ITグループ マネージャー

 

2013年に新卒で金融系システム開発会社に入社。営業支援・顧客管理ツールのアプリ開発や、プライベートクラウドの企画・更改に従事。

その後、味の素に入社し、グループ共通ITサービス(Teamsなど)の展開・運用を担当。

現在はDX推進部にて、AIを活用した新規事業の企画推進や社内チャットボットの利活用、AIシステム開発の推進に取り組んでいる。

 

髙瀬 健太様

DX推進部 グローバルITサービスグループ マネージャー

 

2014年に新卒で味の素に入社し、社内ITサービスの企画・導入・管理や海外拠点への展開に従事。

2018年からはタイ味の素にて地域全体のIT管理を担当。

帰任後は生成AIサービスの導入や業務改革を推進し、2025年より現職。

 

※DX推進部の全体像と取り組みについてのインタビューはこちらから
※DXコンサルタント 新城様への個人インタビューはこちらから

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キャリアと挑戦の始まり

―まずはお二人のこれまでのご経歴と、味の素社に入社された経緯についてお聞かせいただけますでしょうか。まずは高木様からお願いします。

 

高木様:私は2013年に、金融系のシステム開発会社に新卒で入社しました。最初の3年ほどはアプリケーション開発を担当し、その中で、チームリーダーとしてマネジメントも経験しました。次にインフラの企画部門へ異動し、3年間ほど務めました。その中でもチームリーダーを経験しました。

 

キャリアを重ねる中で、「このまま同じキャリアパスを歩み続けていいのだろうか」と考えるようになったのが、転職のきっかけです。実は、大学の専門は農学で、当時は研究者を目指して海外留学も経験しました。もちろん、大規模な金融システムを論理的に作り上げていく仕事にも大きなやりがいを感じていましたが、心のどこかで「自分が学んできた生物系の知識やバックグラウンドを活かして、もっと直接的に社会に貢献したい」という思いが強くなっていきました。

 

特に「食」や「健康」という領域は、人々の生活に身近で、貢献している実感を得やすいと感じました。また、研究者の道を一度考えた人間として、研究者を支え、その成果を世の中に届けることにも貢献したい。そうした思いから、食品業界をリードする当社への転職を決意しました。

味の素インタビュー

―ご自身の学問的なルーツと、社会貢献への思いが転職の決め手になったのですね。ありがとうございます。続いて、髙瀬様のご経歴についてもお伺いできますでしょうか。

 

髙瀬様:私は2014年に新卒で味の素社に入社しました。学生時代は営業やマーケティングといった職種をイメージしていたのですが、配属されたのは情報企画部(現DX推進部)でした。そこでインフラチームの一員として、社内のメールシステムやネットワーク、PCなどの社内共通ITサービスを4年ほど担当しました。

 

その中で、日本本社のITサービスを海外拠点に展開していくプロジェクトに参加する機会が多くありました。そのご縁もあって、2018年から5年間、タイの現地法人「タイ味の素社」へ出向することになりました。当時、タイには10社以上のグループ会社がありましたが、IT担当者がいない会社も多く、セキュリティやインフラ管理が十分でないという課題がありました。私のミッションは、地域全体でのIT管理の仕組みを作り、全体のレベルを引き上げることに加えて、業務で使うアプリケーションの導入や改善なども担当していました。

 

そして2023年に日本へ帰国するタイミングで、先進ITグループを希望して異動し、先進ITグループでは生成AIの活用推進や、デジタル技術を起点とした新しいビジネス、そして一部インフラ関連の仕事も担当しておりました。

味の素インタビュー

 

AIはあくまで武器の一つ。新規事業から業務改善まで担うDX推進部のリアル

―現在のDX推進部でのお仕事について、より詳しくお伺いしたいと思います。お二人が担当されている領域と、具体的な仕事内容を教えていただけますか。

 

高木様:私の業務は、大きく分けて3つの柱があります。
一つ目は、「AIを活用したデジタル新規事業の企画推進」です。これは、DXによって新しいビジネスを立ち上げようという取り組みで、現在2つのプロジェクトが進行しています。私がプロジェクトリーダーとして、事業のアイデア出しから役員へのプレゼン、そして実際のプログラム開発まで、一貫して携わっています。

 

二つ目は「AIチャットボットの社内活用推進」です。当社には「Aji AI Chat」という内製のAIチャットボットがあるのですが、これを国内だけでなく海外のグループ会社にも広めていく活動をしています。ただ導入するだけでなく、どうすれば社員がもっと使いたくなるかを考え、説明会を開くなど、利用率を上げるための働きかけも重要な仕事です。

 

三つ目は「AIを活用したシステム開発の内製化」です。これまでは外部の会社に開発を依頼することが多かったのですが、自分たちの手でスピーディーに開発できる体制を整えようと取り組んでいます。

 

―新規事業の立ち上げから社内への技術普及まで、AIを軸に幅広く担当されているのですね。髙瀬様はいかがでしょうか。

 

髙瀬様:私は、高木とは少し違う角度からDXにアプローチしています。
主要プロジェクトの一つとして、「D2C(Direct to Consumer;お客様に直接商品を販売する事業)の業務改善」が挙げられます。ここではプロジェクトリーダーとして、まず現在の業務の流れ(As-Is)の見える化を行いました。その際はAs-Isに拘り過ぎず、あるべき理想の姿(To-Be)を意識しながら最小限の調査に限定して1カ月で完了させました。その上で、理想と現実のギャップを埋めるために何が必要かを考えます。例えば、「この部分は自動化ツールを入れよう」「ここは業務のやり方自体を変えよう」「ここにはAIが有効だ」といった形で、解決策を企画・実行していきます。私にとってAIは、あくまで業務を良くするための数ある武器の一つ、という位置づけです。

 

その他には、タイでの経験を活かし、これまでIT管理の仕組みが十分に整っていなかった海外の特定地域におけるIT管理スキームの構築やセキュリティの要となるIDや認証に関する社内ルールの策定、新しいソリューションの導入なども担当しています。

現場に眠るチャンスを見つけ出し、自らの手で形にする

―お二人の役割を伺うと、先進ITグループが味の素社のDXにおいて非常に攻めの役割を担っていることが分かります。改めて、このグループが目指しているミッションについて教えていただけますか。

 

高木様:私たちのグループのミッションは、AIというテクノロジーを武器に、「売上アップ」「業務の合理化(効率化)」「新しいサービスの事業化」という3つの価値を会社にもたらすことです。

 

例えば、先ほど髙瀬が話した業務改善の支援は「業務の合理化」にあたりますし、私が担当している新規事業は「新しいサービスの事業化」に直結します。今はまだ業務効率化に関するプロジェクトが多いですが、今後は売上アップに直接貢献できるような取り組みも増やしていきたいと考えています。

―ミッションが非常に明確ですね。特に「業務の合理化」について、具体的なプロジェクト事例があれば教えていただけますか。

 

高木様:面白い事例としては、「クリエイティブ審査AI」を自分たちで開発したプロジェクトがあります。Webサイトに掲載する広告バナーなどの制作物は、表現方法を間違えると、景品表示法などの法律に触れてしまう可能性があります。特に当社のような知名度の高い企業は社会の目も厳しく、非常に慎重なチェックが求められます。

 

これまでは、法務部門などの専門知識を持つ社員が一つひとつチェックしていましたが、これには膨大な時間と手間がかかっていました。そこで、専門知識がある社員の厳しい審査基準や過去のノウハウをAIに学習させ、広告の制作会社などがAIを使って事前にセルフチェックできる仕組みを作りました。これにより、審査業務が大幅に効率化され、担当者はより創造的な業務に集中できるようになりました。

 

―それは非常に画期的な取り組みですね。そうしたプロジェクトのテーマは、会社の上層部から指示が下りてくるのでしょうか。それとも、皆さん自身で見つけてくるのでしょうか。

 

高木様:後者ですね。誰かから指示されるのを待つのではなく、社内のさまざまな部署の担当者と積極的にコミュニケーションを取る中で、「ここに課題がありそうだ」「これはビジネスチャンスかもしれない」と感じた種を自ら拾い上げてきます。そして、すぐにヒアリングを重ねて企画を具体化し、一気に形にしていくフットワークの軽さが私たちの強みだと捉えています。「狩猟型」という言い方もできるかもしれません。

失敗を恐れず、まずやってみる。内製化がもたらした圧倒的なスピード感

―全社的にDXを進めていく上では、さまざまな壁にぶつかることもあるかと思います。現在感じていらっしゃる課題についてお聞かせいただけますか。

 

髙瀬様:一つ大きな課題として、社内のデータがさまざまなシステムに点在していることが挙げられます。長年使われている古いシステムも多く、AIがデータを読み込みやすい形になっていなかったり、システム同士を簡単につなぐことができなかったりします。これでは、せっかくAIを導入しても、その能力を十分に発揮させることができません。まずは、私たちが管理している範囲からデータを整備し、AIが活用しやすいデータ基盤を作っていくことが急務だと感じています。

 

高木様:組織の考え方を変えていくことも大きな課題です。もともと私たちのようなIT部門は、会社の事業を支える重要なシステムを絶対に止めない、という「守りのIT」が主な役割でした。一つのミスも許されない世界です。しかし、DXや新規事業開発で求められるのは、失敗を恐れずにまずやってみて、顧客やユーザーの反応を見ながら高速で改善を繰り返していく、という「攻めの姿勢」です。この発想の転換を組織全体に浸透させることには、今も日々向き合っています。

 

―データの整備や組織文化の変革など、一筋縄ではいかない課題に取り組まれているのですね。そうした中でも、すでに見えている成果があれば教えてください。

 

高木様:最大の成果は、内製化によって開発のスピード感が劇的に向上したことだと思います。以前は「何か新しいことを始めるなら、まずは外部の開発会社に相談しよう」という発想になりがちでした。しかし、先ほどの「クリエイティブ審査AI」のように、まずは自分たちでやってみようという文化が根付いてきました。

 

データサイエンティストなど、専門知識を持つ社員が自ら学びながら開発できるようになったことで、アイデアを形にするまでの時間が圧倒的に短縮されました。また、自分たちで作ることでコストも抑えられるため、大きな予算承認などを待つ必要がなく、スピーディーにプロジェクトを動かせるようになったのは大きな変化です。

 

髙瀬様:地道な活動の成果も出てきています。例えば、社内のAIチャットボットは、私たちが各部署で説明会を開いたり、個別の相談に乗ったりといった草の根活動を続けた結果、社員の利用率が50%近くまで向上しました。社員のAIへの理解が深まることで、「自分たちの業務データも、もっとAIが使いやすいように整理しよう」といった自発的な動きも生まれてきています。少しずつですが、着実に手応えを感じていますね。

味の素インタビュー

求めるのは「枠にとらわれない開拓者精神」。技術を武器に、事業貢献を楽しむ仲間を歓迎

―キャリア採用を強化されるとのことですが、ずばり、どのような方と一緒に働きたいとお考えですか。

 

高木様:マインド面で言えば、好奇心旺盛でオープンな方ですね。社内のどこに面白い課題やチャンスが眠っているか、常にアンテナを張れる人。そして、自ら課題を見つけて解決に向けて動ける人です。AIの世界は技術の進化が非常に速いので、新しい知識を常に学び続けられる探究心も欠かせません。

 

スキル面では、何かに特化している専門家ももちろん魅力的ですが、それ以上に、企画から開発、マーケティングまで、バランス良く幅広い領域に関心を持って取り組める方が、このチームでは活躍しやすいかもしれません。

 

髙瀬様:高木の話に付け加えるなら、「技術を使って、いかに事業に貢献できるか」という視点を持てることが非常に重要だと思っています。私たちはIT企業ではなく、食品メーカーです。「最新の技術に触れたい」という気持ちだけでなく、「食を通じて世界の人々の健康や生活を良くしたい。そのために自分の技術を役立てたい」という強い思いを持った方に来ていただきたいですね。

自分の役割を「ここまで」と決めつけず、枠にとらわれないで、どんどん新しいことに挑戦できる方なら、きっとこの環境を楽しめると思います。

 

―事業への貢献意欲が大切なのですね。お二人のお話を聞いていると、味の素には挑戦を後押しする文化があるように感じます。

 

高木様:その通りだと思います。当社には「開拓者精神」という言葉が昔からあり、ボトムアップ、つまり現場の社員が「これをやりたい」と声を上げることを歓迎する文化が根付いています。特に私たちのような部署では、その風土を活かして、かなり自由に、そしてスピーディーにプロジェクトを進めることができています。これは、転職してきた私から見ても非常に魅力的な点ですね。

キャリアの幅は無限大。グローバルな舞台で食文化を切り拓こう

―最後に、お二人が描く今後のビジョンと味の素への転職を検討されている求職者の方へメッセージをお願いします。

 

高木様:食のサプライチェーン、つまり食材が作られてから私たちの食卓に届くまでの流れには、まだまだ人の手や経験に頼ったアナログな部分が多く残っています。そこにAIとデータを活用することで、生産や輸送を最適化してフードロスをなくしたり、一人ひとりの健康状態に合わせた食事を提案したりと、できることは無限にあるはずです。そうした「食の未来」を、テクノロジーの力で実現していきたいと考えています。

 

当社は冷凍食品からアミノ酸、さらには電子材料まで、非常に幅広い事業を手がけています。一つの会社にいながら、多様なフィールドで自分のスキルを試し、キャリアの幅を広げたいと考えている方にとって、これ以上ない環境だと思います。

 

髙瀬様:今、味の素グループ全体で、AIをはじめとするデジタル技術への期待は非常に高まっています。会社として新しい挑戦にとても前向きなので、国内はもちろん、海外も含めたグローバルな舞台で活躍できるチャンスがたくさんあります。

 

ちなみに、私たちの部署は平均年齢が33.5歳と、全社的に見ても非常に若く、活気のある組織です。専門知識と経験を持った30代のメンバーが中心となって、日々議論しながらスピーディーにプロジェクトを進めています。熱意ある皆さんと一緒に、新しい味の素社を創っていけることを楽しみにしています。

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