AI・データ人材はなぜ続々と三菱UFJ銀行へ?テック×金融で広がるキャリア
日本を代表するメガバンク、三菱UFJ銀行。その巨大組織の中で今、AIとデータを駆使した強烈な変革が進んでいます。
メガバンクの「堅いイメージ」を覆すような最先端の取り組み、そして3年間で600億円という圧倒的な投資規模。
今回は、AI活用を推進する島野様とデータ基盤を統括する藤咲様に、具体的な業務内容をお伺いしました。
| 島野 浩平様
<デジタル戦略統括部 AI・データ推進グループ次長>
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| 藤咲 雄司様
<デジタル戦略統括部 データマネジメント領域 副部長>
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“戦略からカルチャー変革”まで全方位にわたるAI推進
ーまずは、三菱UFJ銀行におけるAI活用の全体像について教えていただけますか。
島野様:私たちのチームの特徴は、担っている役割の幅が非常に広い点にあります。戦略立案といった上流工程から、実際に技術を導入し、社内に展開・浸透させるプロモーションまで、大きく5つの領域を担当しています。
ー具体的にどのようなことをされているのか、上流から順に教えていただけますか。
島野様:まず1つ目が戦略立案です。今やAI戦略は事業戦略と直結していますので、しっかりと経営の中に入り込んで策定しています。
2つ目は、調査研究です。これはAIインテリジェンス活動と呼んでいますが、グローバルのスタートアップや大手テック企業と連携し、少し先の未来を見据えたAIの動向を把握するよう努めています。
また、産学共同研究をしており、実は今、チームメンバーの1人を大学院の博士課程に送り込んでいるんです。

ー社員を博士課程に? それは本格的ですね。
島野様:あと2年ほどで博士号を取って戻ってくる予定です。基礎研究や応用研究に近い「ガチな領域」の研究開発も、大学と連携しながら進めています。
島野様:3つ目は、プロジェクト企画・推進です。予算確保から始めて、体制を作り、ユースケースを描いて実装していくフェーズになります。例えば、AI-bowと呼んでいる生成AIプラットフォームの開発や、Sakana AIのような著名なスタートアップ企業とプロジェクトを動かしています。各社と提携を組みながら、プロジェクトを実施しています。
ここで重要になるのが、AIガバナンスです。最近は「AIエージェントが暴走したらどうするのか」といったリスク議論や、国ごとの法規制も進んでいます。銀行として攻めだけでなく守りもしっかり固めるために、社内規定やルールの整備も私たちのチームで対応しています。
4つ目は、カスタマーサクセスです。銀行内の各部署に対して、「どうやってAIを使えばいいか」「データ分析をどう業務に活かすか」を、最前線で支援していく部隊がいます。
そして最後がプロモーションです。今年に入ってから「Hello,AI@MUFG」というプロジェクトを始めました。これはグループ全体でAIを使うイベントで、お祭りみたいなものです。単なる広報活動ではなく、目的はカルチャー変革です。
イベントなどを通じて、行員一人ひとりが日々の業務をAIで変えていく。最終的には、全員がAIを当たり前に使いこなす「AIネイティブ」な企業へ変革することを目指しています。
ー本当に幅が広いんですね。イベント企画も組織で対応しているんですか。
島野様:そうですね。色々なアイディアを出して4〜5つくらいは動いています。
生成AIを安全に実装し、業務に落とし込む実行力
ーすごいですね。AI-bowは業務で生成AIを活用するための社内のプロダクトの名称ですか。
島野様:そうですね。実際の基盤はAzure OpenAI Service上で構築しています。Azureと連携することで、ChatGPTなどの生成AIを、セキュリティリスクに配慮した形で業務利用できるようにしています。金融機関として、個人情報や取引先情報の漏洩はあってはならないことですので、安全性をしっかりと考慮したうえで使用上のルールをチームで作成しています。
現在は、議事録作成や提案書の骨子作成など、日常業務の中で実際に活用されています。
ー社内の業務効率化やビジネスを前進させる取り組みなど、分野に関わらず推進されているのでしょうか。
島野様:現在進めているのは、稟議書を作成するときの壁打ち相手としてのAI活用です。普段は上司とレビューの時間が十分に取れないこともありますが、AIであれば「ここが足りない」「こう書いたほうが伝わる」といった助言をすぐに返してくれます。
私たちが目指しているのは、成果物を丸ごと作らせるAIではありません。人が壁打ちしながら精度を高め、組織として賢くなっていくようなAIのあり方を追求しています。
個人向け金融サービスの未来をつくる─エムットとAIの融合
ー個人向けの金融サービスとして「エムット」をPRされていますが、今後ここにもAIは関わってくるのでしょうか。
| エムットとは
三菱UFJ銀行の口座をもっと使いやすくするためのアプリ。残高・入出金の確認や振り込み、カード管理などをスマホ1つでシンプルにまとめて使えるサービス。 |
島野様:そこは重要なところですね。私たちは銀行ビジネス全体にAIをどんどん入れていこうとしています。まさに「エムット」のような個人のお客様向けサービスに関しては、特に重要視しています。
今のお客様は、すでに日常生活の中でAIに慣れ親しんでいらっしゃいます。だからこそ、「エムット」ならではのAIを使ったサービスを提供していかないと、お客様には受け入れていただけないのではないか、と考えています。
ーなるほど。では、そうした大きな仕事に取り組む「やりがい」についても改めて教えていただけますか。
島野様:やりがいは、大きく5つあります。まず1つ目は、投資規模のスケールが非常に大きい点です。現在の中期経営計画では、3年間で600億円をAI・データ領域に投資しています。これだけの予算規模でプロジェクトを動かせる経験は、他ではなかなか得られません。
2つ目は、グローバル最先端であることも魅力です。先ほどのAIインテリジェンス活動のように、海外出張も含めて世界の最新動向に触れられます。
3つ目は、ユーザーと近い距離で、企画から開発、活用支援まで一貫して関われるため、「ユーザーが本当に何を求めているのか」を深く理解できる面白さがあります。
4つ目は、多様な仲間と仕事に取り組めることですね。AIチームのキャリア採用は約7割に増えていて、大手テック企業からスタートアップまで協業先はいろいろありますので、さまざまな方と仕事ができます。
最後は、社会インパクトを創造できることです。大手金融グループとして、よりインパクトを出せるというのは、やりがいかなと感じますね。
地味だけど最重要。AI時代の裏側の主役は”データ”
ー藤咲さんの担当されているデータマネジメント部では、具体的にどのような業務を行っているのでしょうか。
藤咲様:大前提として、ITが直接データを生み出すことはありません。システムを作って、そこにお客様や行員が入力して初めてデータが生まれます。つまり、データとは、突き詰めると「ビジネスのログ情報そのもの」だと考えています。
銀行には機能ごとに最適化されたシステムが無数にありますが、その間を人がバケツリレーのようにつないでいる部分も少なくありません。
私たちの役割は、このバケツリレーをなくし、データが自然に流れる状態をつくることです。チームでは「データは、ある種、経済活動における人間の生活における水や電力」と言っています。
ー経済活動ですか。
藤咲様:どれだけ素敵な食材や食器があったとしても、水が汚れていると、あまり美味しいご飯は作れませんよね。ただ一方で、データを整備する作業は、地味でコツコツする仕事なのかなと思っています。
しかし、きっちりとデータ整備をすることで、よりAI戦略が活きると思っています。AI・データが戦略になっているというところは、両輪のような関係かなと思っています。
ー裏側の整備は大変そうですね。仕事は、どのように進めているのでしょうか。
藤咲様:地味な仕事をそのままやるのは嫌ですよね。だからこそ、「ここをいかにおしゃれにやるか」というのが、一つのポイントだと思っています。
銀行には、昔からのレガシーなデータベースがたくさんあります。一方で、データ活用の技術は待ってくれず、1年経てばすぐに古くなってしまうほど変化が速いです。難しい変化とスピードに対応するために、全員が同じ方向を向くために目指すべき方向をしっかり示しています。

「言われてから」では遅い。「データファクトリー」という考え方
藤咲様:私はチームに着任した時から、「ニーズが顕在化してから対応するのでは、ビジネスチャンスを逃してしまう」と言い続けています。ニーズを理解した上で将来のニーズやシーズ(技術・アイデア)をしっかりと情報収集し、感度を高くしてビジネス側と会話しながら先回りする、「企業内のプラットフォーマー」であるべきなんです。
ー先回りして整備していかないと、島野さんのAI推進だったり新しいDX推進も「まずデータを整備してから……」と遅れてしまうことがあるのでしょうか。
藤咲様:そうですね。私自身、ビジネスの経験があるので分かるのですが、ビジネスはすごく勝手なもので、急にアイデアが思いつくんですよ。地政学リスクや法律も変わりますし。そのため、いかに先回りしてプラットフォーマーであり続けるか。かつ、それを継続的にデリバリー(供給)できるように仕組み化するか。
私たちはそれを「データファクトリー」と呼び、工場のように安定してデータを供給できる仕組みづくりを進めています。ですから私たちは、日々のデータ整備と並行して、工場そのもののバージョンアップにも取り組んでいます。
ー工場のバージョンアップですか。
藤咲様:いかに仕組み化して、デリバリーの速度を上げるか、質を上げるか、量を増やすか。これを両輪でやっていくのが主な仕事です。
ー金融機関なら書類はアナログなデータもたくさんあるのかなと思いますが、そういったものの構造化もテーマになりますか。
藤咲様:今はほぼ紙がありません。
島野様:元々は印鑑票(口座の開設で判子を押すもの)というものがあり、全部で3億ページあるものを全てスキャンして構造化データにして検索できるよう、電子化する作業をしました。現在はだんだん紙媒体が減ってきていますね。
「汚いから使えない」とは言わせない。「まず使う」から始める改革
ーレガシーデータを統合して活用できるデータ基盤にしていくのは、ものすごく大変だったのではないかと思うのですが、そのあたりはどのように乗り越えられたのでしょうか。
藤咲様:そうですね。まだ全然「道半ば」というか、半分も進んでいるとも思えないですね。
やはり、ホストコンピューターのような、レガシーなシステムを使っていると、そこからデータを取り出すこと自体が難しいんです。まずはデータをクラウド上にコピーして、取り出しやすくするというところから始めました。
ーまずは物理的にデータを扱いやすい場所へ移したわけですね。
藤咲様:次にデータをまず使うということです。よくあるのが、「データが汚いから使えない」とか「まだデータが集まっていないから使えない」と言って止まってしまうパターンです。どうしてもそう言いがちなんですよね。
ー確かに、完璧なデータが揃うのを待ってしまいがちです。
藤咲様:でも私たちは、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールの導入をここ数年ぐっと進めてきました。
| BI(ビジネス・インテリジェンス)とは 企業内のデータを集めて分析し、意思決定に直結する形で見える化する仕組み。ダッシュボードやレポートで、経営判断・改善策を即座に導ける状態をつくること。 |
今では銀行員としての必須スキルという形で研修も実施していますし、今年からは新入社員研修でもBIツールの研修が必須になっています。
ー新入社員も必須なんですね。支店の行員の方も受けるのでしょうか。
藤咲様:全員ですね。「まず使う」ということを徹底すると、「正しく使うには何が足りないんだっけ?」「具体的にどう汚いんだっけ?」というように、現場からの要望の解像度が上がってきています。
おかげさまで今は現場からのニーズが非常に多くなっていて、嬉しい悲鳴という状態です。そうやってニーズがあるからこそ、データが集まり、整備が進み、結果としてAIの分野でも使いやすいデータ基盤になっていく。使いながら正しくバージョンアップできているんじゃないかな、という気はしますね。

「技術だけ」では通用しない。求めるのは「ビジネス×テック」の人材
ーどんな人材が活躍しているのか、あるいはどんな人材が必要とされているのか、という点について教えていただけますか。
藤咲様:ここ20年ほどで、世の中のIT人材の数は爆発的に広がっています。しかし、各社のCEOやCIO、CSOといった経営層は口を揃えて「人材がいない」と言っています。
実際に海外の統計を見ても、日本の経営層に聞いても、AI活用の最大の障壁は「スキル・人材」だというギャップが一番大きいところですね。
ー人数は増えているのに、現場では足りていないと感じているわけですね。それはなぜでしょうか。
藤咲様:企業が求める人材の定義が変わってきているからです。おそらく企業が求めているのは、私が20年前にやっていたような、いわゆるSEという人材そのものではないはずなんです。
今、求められているのは、「ビジネスサイドにいてビジネスを分かった上で、テクノロジーも知っている」という人材ですが、そういった人材が圧倒的に足りていません。
ービジネス側がテクノロジーを学ぶ、ということですね。
藤咲様:そう思われがちですが、実は違うんです。ビジネスがシステム・テクノロジーを学ぶのは、やはり弱いのかなと思いますね。ただテクノロジーは少し遠いという印象を持つ人も多いと思います。
ビジネス・データ・ITを並べてみたとき、データはビジネスが生み出すものであり、データを使ってビジネスをするものです。ですからビジネスマンからすると、ITは遠いかもしれないけれど、実はデータの方が身近なんですよね。
なので、優秀な銀行員たちが、その業務知識を活かして、「どうやったらデータを使えるか」「どう整備すれば役立つか」というデータマネジメントにチャレンジしており、そういった人材も活躍しています。
ーなるほど。では逆に、テクノロジーサイドの人材についてはどうでしょうか。
藤咲様:テクノロジーサイドも同様です。「単なるテクノロジーだけ知っている」では通用しません。私たちと一緒にフロントで仕事をするときは、ビジネス側と会話・対話をします。そのときに、やっぱり金融ドメインの言葉を一定数覚えないといけないですし、会話を通じて徐々に業務を理解していく必要があります。
「業務を想像しながら、どうテクノロジーを準備するか」を考えられる、そんな素敵な「テッキー(技術屋)」たちも求めています。
ー具体的にはどのような職種・役割で編成されているのでしょうか。
藤咲様:私たちのチームでは、役割や志向に応じて、大きく4つのタイプに分けて編成しています。位置づけとしては、テクノロジー寄りの役割からビジネス寄りの役割まで、次のような並びです。
- ITアーキテクト:一番テクノロジーに近く、システム全体の構造や設計を担うポジション
- データエンジニア:データ基盤やパイプラインを構築する中核的役割
- データアーキテクト:データの構造設計やガバナンスを司る立場
- データスチュワード:もっともビジネス寄りで、データの定義・品質・運用ルールを現場と調整する役割
ーかなり明確に役割分担されているんですね。
藤咲様:はい。そして、こういうデータとテクノロジーをすごく大切にする人たちを鼓舞して盛り上げるために、私の勝手な造語で「Decky(デッキ―)」と呼んでいます。
「データ&テクノロジーで、Dechy(デッキー)な集団」という意味で、オリジナルステッカーを作ってPCに貼ったりして、チームを盛り上げていきたいなと思っています。
ーステッカーを作っているのもカルチャーを表していますね。

「金融×テクノロジー」で選ばれる会社を目指して。唯一無二の環境
ー選考を検討されている方に向けてメッセージをお願いします。
島野様:生成AIが出てきて、どんどんAIの進化が進んでいます。こうした面白い技術が出てくる中で、三菱UFJ銀行というすごく巨大なフィールドで、ビジネス変革の最前線に立てるチームだと思います。
是非こういったところに興味がある方は、積極的に応募していただけると嬉しいです。
藤咲様:私たちは、お客様から「金融×テクノロジー」で選ばれる会社、そして従業員が自信を持てる会社でありたい、その中核を担うのがAIとデータです。
正直に言えば、ここはスピードも変化も激しい台風の目の中のようなところで、決して楽な環境ではありません。しかし、社会にこれだけ大きなインパクトを与える変革のど真ん中にいられる機会は、人生でもそう何度もありません。
そんな環境にチャレンジしてみたいという方は、ぜひ一緒に、金融×テクノロジーで選ばれる会社をつくっていけたら嬉しいですね。
今回のインタビューは当社YouTubeの動画の一部を記事化したものです。ご興味をお持ち頂けた方は以下リンクよりご覧ください。
【三菱UFJ銀行 現役面接官が語る】求める人材や入社前に覚悟すべきことは?AI・データの最前線で挑む仕事とやりがいに迫る【メガバンク/転職活動/面接対策/働き方/リモートワーク/キャリアアップ】
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