【インタビュー】野村総合研究所が提案するDXコンサルティングの本質
DXによる変革を推進している企業をインタビューする本連載。
今回は日本を代表する総合コンサルティング企業である野村総合研究所(以下、NRI)において、金融領域における事業開発・DXコンサルティングを担当されている田所様にお話をお伺いしました。
田所 奈美 様
株式会社野村総合研究所
証券デジタル事業推進部 データPF推進グループ グループマネージャー
2006年にアプリケーションエンジニアとして野村総合研究所へ入社。オンライントレードシステムの開発を担当した後、入社3年目より自社サービスの企画営業部門へ異動。様々なサービスの企画立案や顧客開拓、サービス導入のコンサルテーションに従事し、現在はデータ分析プラットフォーム「D-reel」の事業責任者を務める。グループマネージャーとして、メンバーマネジメントや人材育成も担当。
入社後の経歴・新卒でNRIに入社を決めた理由
ーまずは、田所様がNRIにご入社されてからの経歴について、教えてください。
2006年にエンジニアとして新卒入社し、3年目でサービス企画や事業開発を行う部門へ異動しました。その後はお客様と協働しての新サービス企画やNRI自社投資サービスの企画推進を中心に担当しておりました。私たち証券ソリューション事業本部は、金融機関のバックオフィスシステムや、投資家が利用するようなフロントシステムの運用、営業などを行っています。そういった業務の経験から、「データ活用に関するサービスがお客様に価値を感じていただけるかもしれない」と考え、基幹システムソリューションとは別に、3年前に新しい事業を立ち上げました。「D-reel」というデータ分析プラットフォームを提供しており、現在はその事業責任者を務めています。
私たちがデータ分析を行い、データアナリティクスを専門とする部門とも協業して分析モデル構築まで行っているソリューションです。需要予測や生産性向上を実現するサービスとして、金融機関様向けに提供しています。
ー田所様は新卒でNRIにご入社されたかと思いますが、当時の入社の決め手は何だったのでしょうか。
今振り返ると、自由な社風に惹かれたんだと思います。選考はもちろん複数社受けており、正直なところ当初は志望していた業界ではなかったのですが(笑)、最終面接の際に「他も受けているのでもう少し検討したい」と正直に伝えたんです。そうすると、「ぜひOGにも会って、じっくり考えて決めたらいい」と言ってくれて。他の会社さんとは違って、フラットに私の人生を考えてくださる会社なんだなと思い、他社の内定をお断りして、最終的にNRIに決めました。あまり考え方が古臭くなくて、自分たちが頑張ろうと思えば自由にやらせてもらえる会社なのかな、と感じたのがすごく大きいと思います。
現場の発案から生まれた新規事業開発プロジェクト
ー先ほどお話にあった新規事業「D-reel」は、どういった経緯で取り組み始めたのでしょうか。
日々お客様と折衝する中で、やはりデータの分析や利活用は、今後絶対必要になるという確信がありました。お客様がデータを持ち合わせていること、そしてそれが有効活用できてないからこそ、価値を見出していただけると思っていました。
花開くまでは数年かかることも見越した上で立ち上げ、2〜3年は様々な苦労がありました。最近はBIツールを利用してお客様の蓄積されたデータを分析したり、可視化したりすることの重要性がようやく認められてきた実感があります。特に昨年度は、大手企業様からの引き合いも多くあり、事業として飛躍的に拡大しています。
ー確かにデータ活用のソリューションは様々な領域でニーズがありそうですね。候補者の方からすると、コンサルタントはクライアントワークが中心というイメージを持たれている方もいらっしゃるかと思いますが、事業立ち上げの機会などは自分自身の動き方次第、ということでしょうか。
そうですね。「チャレンジしたい」ということに反対する人は誰もいないですし、意志がある人にとっては自由度の高い環境だと思います。
NRIは現場の横の繋がりが特に強く、別部門の部長が声をかけてくれるなど、領域問わず協力しあうといった動きがよくあります。新規事業の「D-reel」は経営陣の賛同をはじめ、社内、社外問わず様々な人の助けがあって、ようやくここまで来ることができました。
一緒に働くコンサルタントのメンバーも、楽しいのはおそらく、お客様のニーズ通りに動くことだけではなく、自分が考えたことが実現でき、それがお客様の為にもなるという部分なんだと思います。
成功するDXプロジェクトに不可欠な要素とは
ーこれまで多くのクライアントから、経営やシステムに関するご相談をいただいてきたかと思いますが、DXという言葉が直近謳われるようになってから、クライアントニーズや相談内容に変化は感じられていますでしょうか。
たとえば金融業界でいうと、銀行様は、データ分析やデータ活用はすでに一通り試されていて、DXと言われるものをなんとなくやっただけでは変わらない、ということを実感しているフェーズなのではないでしょうか。DXと聞くと華やかで、大きな変革ができるイメージが強いですが、成功しているお客様を見ていると、業務に紐付けたKPIがしっかりあって、どれだけ現場で使われているのかに注力されている会社様が多いです。
証券会社様は、仲介業の法令の改正もあり、金融商品の提供が金融機関だけに縛られなくなったタイミングで、ビジネス環境が大きく変わりました。お客様をどう集めていくか、お客様の満足度をどう上げていくか、どのセグメントにどうアプローチしていくか、等が課題になっていますので、データ分析は必須という考え方がスタンダードになっていると思います。
ーDXが上手くいっているケースに触れていただきましたが、逆に上手くいっていないケースとの違いはどういった点が考えられるでしょうか。
弊社がプロジェクトをご支援させていただく際に、お客様には「現場業務変革に裁量権を持たれている方をアサインメントいただいた方が良いです」とご相談しています。
我々だけが動いてお願いするだけではやはりうまくいきにくい部分もあり、現場の方々も含めて変えたいという覚悟を持っていただく必要があります。その分、弊社も同じような気持ちを強く持って、プロジェクトを立ち上げています。
そういったDXプロジェクトの場合はすごくうまくいくし、その後も、ちゃんと変わってきてるなと思います。
最初は漠然としたご相談も多いので、まずは経営コンサルティング部門と協力して海外や他社の事例を用いた勉強会からスタートする場合もあります。長いとそれが半年ぐらい続き、ようやく実行に移すケースもあります。
そういった期間でまず思考を整理いただいてから、本質的な課題は何なのかを把握した上で、データソリューション等で解決できるのか、もしくは違う方法なのか、判断しています。
ー企業は貴社以外のコンサルティングファームにもご依頼されるケースがあると思いますが、田所様の視点やお客様のお声から、貴社ならではの強みだと感じられるのはどういった点でしょうか。
本質的には”地に足がついた、実現性の高いコンサルティングをする”ということが強みだと思っています。
コンサルティングとソリューションが並走し、ビジネス構想を一気通貫でシステム開発まで繋げるのが、私たちが目指すいわゆる「コンソリューション」です。コンサルタントは、お客様がどう着地できるかまでを考え抜いているので、他社から移行いただいたお客様からは、現実的な提案が喜ばれています。
正直、真面目で、お客様にとっては面白みがないかもしれないのですが、「DXは夢を語るだけじゃダメなんだ」ということが理解され、「野村総合研究所に頼んだ方が、実態に伴うんじゃないか」とお客様に感じていただく機会も多いです。
お客様である証券会社様からも、業務理解があり、コンサルもできて、ソリューションを提案してくれるのはNRIさんならではですよねと、選んでいただいています。
NRIが求めるDX人材の特徴
ー改めて感じられている貴社のDX人材採用における人材要件について、スタンス面も含めてお伺いさせてください。田所さんから見て、NRIで活躍される人材はどういった方だと思われますか。
DX人材は、自ら課題を整理して、ソリューションを考える”前向きさ”が必要だと思ってます。リスク低く、着実に進めることも重要ですが、もっとお客様を良くするとか、自分たちが良くなるということへのモチベーションとマインドを持っている人が向いている領域なのかなと思っています。
NRIでいうと、自分の意思を強く持っていて、自ら課題を立てそれを解決できる人材が合っていますね。それはDXに限らず、人材育成でもなんでもいいと思います。何かしらに想いを持って、こうしたいということがない限りは、人を巻き込んで、率いることも難しいし、周囲を変えることも難しい。
ー田所様のような前向きなスタンス、力強いモチベーションはどのように形成されてきたのでしょうか。
私は「D-reel」を自分の子供のように思っていて(笑)。事業じゃなくても、小さいことでもいいので、自分が考えたことが人に認められるって、すごく嬉しいんですよね。私のメンバーもそうですが、例えば自分たちで作ったダッシュボードをお客様に提供した時に喜んでいただける、みたいなことって、なかなか体感できることじゃないので。自分が認められてると感じられるので、それを守りたいって思うだろうし、これをやり通すんだ、みたいな気持ちになるんだと思います。
ー配属された人材を、活躍する社員にさせるためにアドバイスされてる点はございますか。どういった素養があると活躍できるなど、田所さんなりに感じるポイントがあれば教えてください。
周囲とのコミュニケーション量が多いこと、人を巻き込めること、かなと思います。私のチームの入社2年目の女性社員は、とにかく物怖じせず、周りとのコミュニケーションをとっていて、素晴らしい人材だと思っています。仕事って1人でやらなくてもいいと私は思っているので、誰かの手助けを受けて彼女が何かを成し遂げたなら彼女の成果だし、目指すものが決まっていれば、人を巻き込めばいい。うまく周囲と協力して巻き込むコミュニケーション力がある人の方が、弊社には合っていると思います。現場がやりたいことに耳を傾けてもらえる文化があるので。
ーDX人材の育成について、入社後の育成はどのような観点を大事にされているのでしょうか。
もちろん研修もありますが、最終的にはOJTでプロジェクトを通して成長する部分は大きいと思います。そのため、メンバーから学びたいこと、やってみたいことの相談があれば、基本的には全部やってみてもらいます。就業時間の中でやるべきことが早く終わったら、興味のある分野に取り組むのでもいいですし、社会人として自分でコントロールさえしてくれれば、何に時間やお金を使っても問題ありません。
極端に言えば、事業部のミッションの方向性に沿っていなくても大丈夫です。うまくいかなかったら、その経験も大事だと思っているので、小さな失敗があっても、ぜひチャレンジはしてほしいです。
NRIへの応募を検討している方へのメッセージ
ー最後に、NRIへ応募を検討されているDX人材に向けてメッセージがありましたら、お願いいたします。
これまでの話の中でもお伝えした通り、NRIには、自分次第で様々な可能性やチャンスを作ることができる環境があります。今の環境に不自由さ、窮屈さを感じている方にはぜひ挑戦していただきたいです。
また、自己成長したい気持ちが強い方も、入社後とても伸びているように感じます。自分の意思をしっかり持っている人は、やはり素敵だと感じるし、キャリアアップしていることが多いですね。以前、経営コンサルティング部門の部長に、自分の提案を持っていったことがあります。とても紳士的に聞いてくれて、指摘やアドバイスももらいました。上下関係なく、いろんな意見を受け入れてくれて、まずは時間を作ってちゃんと聞いてみようという姿勢がとても嬉しいですし、本当にすごいことだなって思います。
これからご入社される方も、自分は何がしたいのかを突き詰めて、信念を通して自由にやってみてほしいですね。