クオンツの年収ガイド｜転職成功のために必要なスキルと業務内容

クオンツとは？

クオンツ（Quant）とは、英語の「Quantitative」（数量的、定量的）に由来する言葉で、高度な数学的・統計的手法を用いて金融市場を分析する専門家を指します。クオンツの主な業務は、以下の3つに大別されます。

 

トレーディング

市場のデータを分析し、収益性の高い自動売買システムを構築します。

 

リスク管理

金融商品の価格変動や市場リスクを数学的にモデル化し、損失を最小限に抑えるための戦略を立てます。

 

アルゴリズム開発

トレーディングやリスク管理のために、高度な計算を行うためのアルゴリズムやモデルを設計・開発します。

 

クオンツの主な役割は、複雑な市場の動きを数理モデルで解明し、リスク管理を行ったり、利益を生み出すためのアルゴリズム開発や取引戦略を考案することです。この分析手法は「クオンツ運用」と呼ばれ、たとえば「日経225に連動するポートフォリオを最適な銘柄の組み合わせで作成するにはどうすればよいか」といった課題に対して、理論的な解決策を導き出します。

 

現代の金融業界は、膨大なデータを高速で処理する能力が不可欠であり、クオンツの存在は企業の競争力を左右するほど重要になっています。

クオンツの年収の実態

クオンツの年収は、その専門性の高さから非常に高水準にあります。複数の調査によると、クオンツの平均年収は900万円から1,000万円前後で、特に901万円〜1,000万円の層が最も多いです。

 

キャリア初期の20代では600万円前後からスタートするケースが多いものの、30代で1,000万円を超えるケースが珍しくなく、40代以上では1,500万円以上を狙うことも可能です。また、企業の規模によっても年収は大きく異なり、従業員数1,000人以上の大企業では、平均年収が950万円に達するなど、高い傾向にあります。

 

このデータはあくまで平均値であり、個人のスキル、経験、実績が年収を大きく左右します。特にリーダー経験や高度な専門スキルを持つ人材は、さらに高い年収を期待できるでしょう。

 

参照：リクルートエージェント 転職データライブラリ（2025年8月時点）

クオンツ年収の上昇要因

クオンツの年収は、経験年数と実績に比例して上昇します。特に、開発したモデルやアルゴリズムが実際に高い収益を上げた場合、年収は劇的に増加する可能性があります。

スキルアップによる年収アップ

年収をさらに上げるには、スキルの向上が不可欠です。以下のようなスキルを習得・深化させることが重要です。

 

プログラミングスキル

PythonやC++、Rなどの言語は必須です。高速な処理が求められるアルゴリズム開発ではC++が特に重要となり、データ解析や機械学習ではPythonが広く使われます。

 

統計学・機械学習

複雑なデータ解析や予測モデルの構築には、高度な統計学や機械学習の知識が不可欠です。最新のAI技術を業務に応用できる能力は、市場価値を大きく高めます。

 

金融工学

デリバティブ評価やリスク管理モデルを構築するためには、金融工学の専門知識が求められます。

所属企業や部署による年収差

所属する企業や部署も年収に大きく影響します。

 

ヘッジファンド

個人のパフォーマンスに応じたインセンティブやボーナスの割合が非常に大きく、トップクオンツは数千万円の年収を得ることもあります。

 

投資銀行

基本給に加えて巨額のボーナスが期待でき、大手金融機関に比べて年収水準が非常に高い傾向にあります。

 

大手金融機関（銀行、証券会社）

安定した年収が見込めますが、投資銀行やヘッジファンドに比べると年収水準はやや控えめなケースが多いです。

クオンツに求められるスキルと資格

前述したとおり、クオンツとして高年収を狙うには、専門的なスキルと知識が不可欠です。

 

まず、Python、C++、Rなどのプログラミングスキルは必須です。特に高速な処理が求められるアルゴリズム開発ではC++が重要となり、データ分析や機械学習の分野ではPythonが広く使われます。これらのスキルに加え、数学・金融工学・統計学に関する大学院レベルの知識が求められます。

 

また、必須ではありませんが、CFA（CFA協会認定証券アナリスト）やFRM（金融リスクマネジャー）などの専門資格は、高度な知識を証明する上で有効です。金融工学修士（MFE）などの学位も、キャリアアップの大きな武器となります。

 

上記のスキル・資格を習得した上で、データ分析やアルゴリズム設計、リスク管理といった実践的なスキルを磨けば、転職市場での市場価値が高められるでしょう。

クオンツ職の求人市場と転職活動

クオンツの専門性は高く、求人市場は活発です。AIや機械学習の進化に伴い、アルゴリズム開発やリスク管理の自動化が進んでおり、高度なスキルを持つクオンツの需要は今後もさらに高まると予想されます。

転職活動の進め方

クオンツの求人は、その専門性の高さから、一般の求人サイトに公開されないケースも多いです。そのため、クオンツへの転職を成功させるには、金融業界に特化した転職エージェントの活用が不可欠です。

 

特に、ハイクラス転職に強みを持つ「sincereed」のようなエージェントは、非公開求人を多数保有しており、自身のスキルや希望に合った求人を紹介してくれます。まずは、キャリアの可能性を探るため、転職エージェントへのご相談をお勧めします。

求められる経験とスキルをアピールする方法

履歴書や職務経歴書では、単にスキルを羅列するのではなく、過去の業務でどのような成果を上げたかを具体的に記載しましょう。

 

例えば、「〇〇のアルゴリズムを開発し、取引収益を△△%向上させた」といったように、具体的な数値を盛り込めば、即戦力となることを効果的にアピールできます。また、面接では技術的な質問に加えて、自身の論理的思考力や問題解決能力をアピールする姿勢が求められます。

 

参照：書類通過率を上げる職務経歴書の書き方 | 大手企業に強いハイクラス転職エージェント【シンシアード】

クオンツ職のキャリアパスと成長機会

クオンツとしてのキャリアパスは多岐にわたります。主なキャリアアップの道筋は以下のとおりです。

 

専門職への特化

リスクアナリストやデリバティブクオンツとして、特定の分野の専門性を高める。

 

マネジメント職

チームリーダーやマネージャーとして、プロジェクトを統括する。

 

他職種への転身

クオンツとしての分析スキルを活かし、ポートフォリオマネージャーやトレーダーを目指す。

 

他業界への進出

AIやデータサイエンスの専門家として、金融以外のIT企業やコンサルティングファームで活躍する。

 

クオンツへの転職で年収を上げるには、専門性の強化が不可欠です。CFAやFRMといった資格は、高度な知識を証明し、キャリアアップに有利に働きます。また、20代から高年収を狙うなら、外資系金融機関への転職も有効な戦略です。

 

クオンツの役割はAIや機械学習の発展とともにますます重要になっており、常に最新技術を学び続けることが、将来のキャリアを切り開く鍵となります。

クオンツ職の給与と福利厚生

クオンツの給与は、基本給に加えて、ボーナスやインセンティブの割合が大きいのが特徴です。特に、ヘッジファンドなどでは、個人のパフォーマンスが報酬に直接反映されるため、年収に占めるボーナスの割合が非常に高くなるケースがあります。

 

大手企業では、健康保険や年金制度に加えて、ストックオプションや住宅手当などが充実しています。また一部の企業では、パフォーマンス評価に基づく報酬体系や、成績に応じた特別ボーナスが設けられてるケースも多いです。

 

一例として、大手総合証券会社の一つである「大和証券株式会社」の募集要項をご紹介します。クオンツへの転職を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

［リスクマネジメント部］モデル検証（クオンツ業務）

ポジション	中堅担当者～チームリーダーポジション
業務内容	・時価評価モデルの検証業務、報告書作成、報告 ・上記モデル検証に付随する海外拠点との協働・クオンツとのディスカッション・検証プランの作成 ・リスク計測モデルの検証実施と検証レポートの作成・報告 ・グループベースのモデル・リスク管理態勢強化
必須スキル 経験	【必要なスキル】 ・金融機関において、モデル検証もしくはモデル開発の経験（3年程度） ・金融工学・統計解析の知識 ・金融商品の知識 ・プログラミングスキル（Python、C++、R、SAS、VBA等） ・関係者とのコミュニケーション力 【歓迎スキル】 ・理系大学院の修士課程や博士課程において金融工学・統計数理の研究 ・機械学習・自然言語処理の知識 ・AI機械学習モデル開発経験 ・検証結果の解釈・モデルの影響についてのビジネス的解釈 ・プロジェクト参加経験（複数の関係者間意見調整） ・英語でのコミュニケーション力（ビジネスレベル）
給与	予定年収：800万円～1,300万円 賃金形態：月給制 賃金内訳：月額（基本給）300,000円～700,000円 月給：300,000円～700,000円 昇給有無：有 残業手当：有 ＜給与補足＞※上記は想定年収であり、詳細は経験等を考慮し同社規定により決定します。 ■昇給：年1回（6月）■賞与：年2回（6月、12月） 賃金はあくまでも目安の金額であり、選考を通じて上下する可能性があります。月給(月額)は固定手当を含めた表記です。
待遇・ 福利厚生	通勤手当、家族手当、住宅手当、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、 労災保険、退職金制度 【各手当・制度補足】 通勤手当：通勤交通費および業務用交通費全額支給 社会保険：社会保険完備 【教育制度・資格補助補足】 ・留学制度：毎年若干名の社員が海外のビジネススクールへ派遣され、MBA取得を目指す ・資格ポイント制度：昇進・昇格に必要な一定の資格取得に向けふさわしい知識を得る 【その他補足】 ・昼食費補助、従業員持株制度、財形制度等 ・医療（定期検診、人間ドック等）、確定拠出年金、保養所など

 

参照：採用情報｜大和証券株式会社（2025年8月時点）

参照：大和証券株式会社 求人情報｜転職ならdoda（デューダ）（2025年8月時点）

まとめ｜クオンツへの転職を成功させるために

クオンツへの転職を成功させるには、以下の3つのポイントが鍵となります。

 

• 高度な専門性の証明
• 具体的な実績のアピール
• 戦略的なキャリアプラン

 

まず、PythonやC++などのプログラミングスキルに加え、数学・統計学・金融工学の知識を徹底的に磨きましょう。CFAやFRMといった資格は、専門性を客観的に示す上で非常に有効です。

 

職務経歴書では「開発したアルゴリズムで収益を〇〇%向上させた」のように、具体的な成果を数値でアピールすることが重要です。また、高年収を狙うならヘッジファンドや投資銀行など、高い給与水準の企業をターゲットに定めましょう。金融業界に特化した転職エージェントを利用すれば、非公開求人にもアクセスでき、高収入へのチャンスが広がります。

 

クオンツは専門性を高めるほど年収アップが期待できる魅力的な職種です。この記事を参考に、自身のキャリア戦略を具体的に描いてみてください。