
味の素が進めるDXとは – DX銘柄にも認定!どんな方針・施策なのか
味の素株式会社は、食品、医薬品、化学製品まで幅広い事業を展開する、日本を代表する食品メーカーの一社です。「ほんだし」「アミノバイタル」などの強力なブランドを持ち、健康や環境課題に取り組む「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)経営」を掲げています。
転職者にとっては、成長機会の多さや高い年収、手厚い福利厚生が魅力です。大企業だからこその安定した経営や、知名度から就職・転職において人気が高い企業です。
食品業界においては、次の時代を見据えてDX(デジタルトランスフォーメーション)が急務だと言われています。IT技術やデジタルデータを活用することで、企業活動をよりスマートに、効率的に改革していくことが企業競争力につながります。
本記事では、味の素のDX(デジタルトランスフォーメーション)の状況について紹介します。
味の素のDXに関する方針
DXに関するトップメッセージとして、味の素では以下のように発信しています。
「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業へ
当社グループでは2019年当時の経営の強い危機意識から、2020年パーパス経営に生まれ変わることを宣言しました。併せて歴史的に強い縦型組織の良いところを活かしつつ、デジタル・トランスフォーメーション(DX)により組織の横連携を強化し、自発型組織への転換を目指した企業変革を進めてきました。そして現在、進化した新パーパス「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業として、社会変革をもリードする存在でありたいと願っています。
当社グループは、「ASV経営」と「志×熱×磨」を受け継ぎながら、変えること、進化させること、即ち経営の「スピードアップ×スケールアップ」を実現していくことを経営方針としています。
この経営方針に基づいて、オペレーション変革、エコシステム変革、事業モデル変革、イノベーション創出、技術資産強化、人的資産強化など多岐にわたる変革にデジタル技術をフルに活用し、「スピードアップ×スケールアップ」を推進しています。
広義のデジタル・トランスフォーメーション(DX)とは社会のデジタル変容を意味するものと捉えておりますが、当社グループでは「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」をパーパス(志)として、社会価値と経済価値を両立させるASV経営を進化させ、「志×熱×磨」を追求し「スピードアップ×スケールアップ」を図る手段としてDXを推進しています。
そして当社グループが真の意味で「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」企業に変革することをDXの目的としています。
味の素のDX状況
味の素は、2022年4月には、経済産業省より「DX認定制度」の認証を取得し、さらに2023年6月には、経済産業省と株式会社東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2023」に選定されるなど、実際にDXを大きく進めています。
DX銘柄の選定にあたって、下記の4点が高く評価されているようです。
- 企業の目的が社会と密着している利点を大いに活用し、社外のエコシステムや社会の変革に向けた大胆な計画を立て、そして着実に成果を上げている。
- 自社独自のDXの定義とロードマップを敷いている点は分かり易く、食品業界の中でも非常に優れた取り組みである。
- 業態変革への道筋とDXのロードマップが整合している。またその戦略的方向性を軸に企業価値貢献・実現能力ともに取り組みが包括的かつ具体的である。
- 「食と健康の課題解決企業」として、一貫して生活者視点で仕組みが考えられている点が素晴らしい。テクノロジーの活用で直接のタッチポイントを作り、情報発信を通じて生活者の課題を解決しようとしている。
デジタル技術の進歩・浸透によって急速に変容する社会において、味の素グループでは「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」をパーパス(志)として、2030年までに10億人の健康寿命を延伸し、環境負荷を50%削減するというアウトカムを目標として掲げています。
パーパスを実現する取り組みとして、事業を通じた社会価値と経済価値の共創を図るASV(Ajinomoto Group Creating SharedValue)経営を進化させ、「志×熱×磨」を追求し、「スピードアップ×スケールアップ」を図る手段としてDXを推進すると宣言しています。
味の素がDXで思い描く未来とは?
では、ここからは味の素がDXで具体的にどのような取り組みを進めていくかを見てみましょう。
味の素社のDXには、4つの大きな柱があります。
(1)生活者ひとりひとりのニーズに合った商品・サービスの提供(パーソナライズドマーケティング)
(2)ロボットやAI(人工知能)を活用した「スマートファクトリー」の導入
(3)経営やサプライチェーンのエコシステム化
(4)さまざまなプレイヤーが社会課題の解決に向けて協働するための仕組みづくり(コレクティブインパクトを実現する新事業変革)
順番に見ていきましょう。
パーソナライズドマーケティング
パーソナライズドマーケティングとは、顧客一人一人に合わせたマーケティングのことです。これまでのマスに向けた商品開発・提供ではなく、生活者の属性や行動履歴に基づき、その人に合った製品やサービスを提供していくことです。
Webサイトやブログ、SNSの情報などをもとにしたマーケティング調査において、トレンドや生活者の購買履歴などを組み合わせて分析することで、生活者の意識や行動を多面的にとらえることができます。
このような、パーソナライズドマーケティングと、インタビューやアンケート調査など従来のマーケティング手法を組み合わせれば、生活者のニーズをより的確にとらえることができます。一方でデジタル化が進んだ時代だからこそ、その手掛かりとなるデータも多種多様です。
スマートファクトリー
スマートファクトリーとは、AIなどデジタル技術を活用した生産性が高く効率的な工場のことです。
工場では、ロボット・AIの積極的な導入はもちろん、調達・製造から消費者に届くまでのすべての工程において無駄をなくし、日本社会だけではなく、地球規模での資源や在庫の無駄をなくします。これは、手段や条件をクリアにすることで製品を効率的に生活者に届けることを目的としています。
味の素グループの製品を生み出す工場の建設・改修を行う味の素エンジニアリング株式会社での取り組みは、クラウド上に再現された「3D工場」で、リモート設備管理サービスを実施。工場の敷地全体をレーザースキャンしてデータ化し、設置された機械類のデータには点検履歴や取扱説明書を紐づけます。管理者は、新規機器導入やレイアウト変更を考える際も、システムで表示した3Dデータ上で検討できるシステムです。
サプライチェーンのエコシステム
サプライチェーンとは、製品の製造から販売までの一連の流れのこと。
これは、味の素グループの経営やサプライチェーンをスマートネットワーク化することで、より効率的なエコシステムを形成することを指します。
ここでいうエコシステムは、それに加えて社外の協力企業までも含めた大きなネットワークを形成し、社員それぞれがさまざまな働き方と責任を持ってそこに参加するものです。
コーポレートサービスのジョイントベンチャー化やなども含め、グループとしてのかたち全体を大きく変えることもいとわず検討しています。
コレクティブインパクトを実現する新事業変革
これまでの上記3項目を踏まえて、新しい事業モデル変革を目指します。
コレクティブインパクト(Collective Impact)とは、共通の目的のためにそれぞれが社会課題の解決に取り組むことを指します。味の素グループ内だけに留まらず、幅広い外部パートナーと協創・協業を行いながら、新しい事業を生み出すためのエコシステムを構築します。
この新しい事業を生みだすエコシステムを、役員やDX推進委員会がバックアップしていきます。
このように、「食と健康の課題解決企業」として社会変革をリードする存在として、味の素が取り組むDXを紹介してきました。
味の素グループはさらなる新しいアイデアや取り組みに挑んでいくため、DX人材は必要不可欠です。
自身のITスキル・デジタルスキルを活かし、食の課題解決に挑みたい方にはふさわしい職場だと言えそうです。
味の素の会社概要
社名 | 味の素株式会社 |
本社所在地 | 東京都中央区京橋一丁目15番1号 |
代表者 | 代表取締役社長 藤江 太郎 |
設立 | 創業:1909年5月20日 設立:1925年12月17日 |
資本金 | 79,863百万円(2024年3月31日現在) |
従業員数 | 単体3,480名 連結34,862名 (2024年3月31日現在) |
事業所 | ・本社/東京
・研究所/川崎 ・工場/川崎・四日市・佐賀 ・支社/東京・大阪・九州(福岡)・名古屋・東北(仙台) ・支店/広島・金沢・さいたま ・営業所/新潟・長野・岡山・静岡・盛岡 |
海外 | アメリカ、フランス、タイ、インドネシア、中国、ブラジルなど34カ国・地域 |
業績推移 | 決算期 売上高 当期純利益(百万円)
―――――――――――――――――――――――――― 2022年3月期 1,149,370 75,725 2023年3月期 1,359,115 94,065 2024年3月期 1,439,231 87,121 |
主要製品 | 【国内食品】「味の素(R)」、「ほんだし(R)」、「Cook Do(R)」、スープ類、マヨネーズ類、「パルスイート(R)」、「アミノバイタル(R)」等
【海外食品】「味の素(R)」、風味調味料、即席麺、飲料等 【バイオ・ファイン】各種アミノ酸、アスパルテーム、化成品 食品工業向け「味の素(R)」、核酸系調味料等 【医・健康】スポーツ栄養食品、栄養ケア食品等 【そのほか】物流、各種サービス ほか |
関連会社 | ヤマキ(株)、味の素冷凍食品(株)、(株)J-オイルミルズ、味の素AGF(株)、EAファーマ(株)、味の素ファインテクノ(株)、(株)味の素コミュニケーションズ、味の素トレーディング(株)、F-LINE(株)、北海道味の素(株)、タイ味の素社、インドネシア味の素社、アメリカ味の素社 ほか |
経営理念
味の素の企業理念は「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」を中心に展開されています。この理念は、社会課題の解決を通じて経済的な価値を創出し、それを次の事業活動に再投資することで持続的な成長を目指すものです。また、アミノサイエンス®を活用し、「Eat Well, Live Well.」というスローガンのもと、人々の健康と生活の質を向上させることを目標としています。
さらに、2030年までに「10億人の健康寿命を延伸」し、「環境負荷を50%削減する」という具体的な目標を掲げています。これらの取り組みにより、食品業界を超えた社会貢献を実現し、地球全体のWell-beingに貢献することを企業の使命としています。
このような持続可能な成長と社会貢献を柱にする味の素は、経済的利益の追求だけでなく、社会的価値との両立を重視しているのが特徴です。
味の素の事業内容
味の素株式会社の事業内容は、食品業界にとどまらず、医薬品や化学製品など多岐にわたります。
食品事業
調味料・加工食品
「ほんだし®」や「Cook Do®」などの調味料や、冷凍食品(餃子、チャーハンなど)が主力商品です。国内外の市場向けに現地の嗜好に合った製品を提供することで、地域ごとに最適化した製品展開を行っています。
冷凍食品
冷凍食品では、日本国内のみならず、アジア、北米、ヨーロッパなどグローバルな市場で展開しています。「ザ★チャーハン」「POT STICKERS」などが代表的な商品で、利便性と美味しさの両立を目指しています。
アミノサイエンス事業
アミノ酸に関連する製品とサービスを提供するこの事業は、食品用のうま味調味料、医薬品用アミノ酸、中間体製品、サプリメントなどが含まれます。また、味の素のアミノ酸技術は、医薬やバイオテクノロジー分野にも応用されています。
ライフサポート事業
化学製品・電子材料
「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」などの半導体材料や接着剤を提供し、エレクトロニクス産業を支えています。これにより、電子デバイスの高性能化に寄与しています。
動物栄養・化成品
飼料用アミノ酸などを提供し、畜産業の効率化と持続可能性に貢献しています。さらに、パーソナルケア製品向けの成分も開発しています。
ヘルスケア事業
アミノ酸を応用した健康サポート製品、スポーツ向けサプリメント「アミノバイタル®」の提供や、医薬品の開発支援を行っています。また、栄養バランスを整える機能性表示食品の展開にも注力しています。
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